『科学的根拠のあるトレーニングをすべての人へ発信する』
以下のテーマに興味と熱意のある大学院生(後期課程、前期課程)を募集します。詳しくは問い合わせてください。
遺伝子多型と競技パフォーマンス、トレーニング効果およびスポーツ損傷との関連性
個人の特徴を示す遺伝情報は、体力測定のデータと同様にスポーツ現場において有用なツールと成り得る。これまで、特に骨格筋の構造に関わるACTN3遺伝子の多型と競技パフォーマンス及び発揮パワーとの関連性を報告している(Kikuchi et al. 2012,2013,2014,2015,2016)。また、レスリング選手(Kikuchi et al 2016)、スポーツクライミング選手(Saito et al. 2021, 2022)、ウェイトリフティング選手(Homma et al. 2020, Kikuchi et al. 2021)など特定の競技選手における遺伝子多型についても報告している。候補遺伝子アプローチだけではなく、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を用いた網羅的解析も進めている。
近年では、スポーツ遺伝子研究の国際的なコンソーシアムであるAthlome プロジェクト(Pitsiladis et al., Physiolosical Genomics.2016)に参加し、国際的な共同研究を進めている。
筋力トレーニングおよび持久トレーニングによる効果に関する研究(性差を含む)
身体トレーニングは、競技力の向上、損傷の予防、健康増進に非常に有益な手段である。近年では、トレーニングの種類の多様化により、科学的な根拠がないままトレーニング方法のみが一人歩きしてしまっている場合も多く見受けられる。本研究室では、強度や休息時間などのトレーニング変数の科学的な根拠の検証を行い、筋力トレーニングのエビデンス構築を目指す。現在は、自重トレーニング、低強度トレーニング、高強度インターバルトレーニング、コンカレントトレーニングに関する研究を進めている。また、筋力トレーニング中のスピードに着目したVelocity Based Trainingについても検討を行なっている。特に筋力トレーニング流のスピードの低下率であるVelocity lossに着目し、筋力パワーや筋の形態、血管機能への効果を検証している。
コンカレントトレーニングとは、筋力トレーニングと有酸素トレーニングを組み合わせて行うものである。コンカレントトレーニングは、筋力トレーニングは筋肥大の効果を阻害する可能性が近年のレビュー(Wilson et al. JSCR. 2013)で報告されており、我々も同様の報告を行っている(Kikuchi et al. JSCR. 2015)。今後、その要因の解明と効率的なトレー二ングの実施方法の検討を行っていく。
遺伝子改変動物を用いた基礎研究
遺伝子多型研究などで得られた結果をもとに、遺伝子改変動物での基礎研究をおこなっている。アスリートを対象に明らかとなった関連遺伝子について、生体内(in vivo)でどのように機能しているかを探求する。歴代最多のオリンピック選手を排出する日本体育大学において、基礎、応用研究を通して一般者、アスリートの指導現場への場架け橋となるような研究を目指している。
トレーニング指導者育成のためのカリキュラム作成
特別な教育を受けたトレーニング指導者の需要は、今後ますます高まることが予想される。しかしながら、日本での教育プログラムはまだ整っていないのが現状である。本研究室では、「トレーニング実践演習」という講義と実技からなる授業を展開している。今後、トレーニング指導者の育成を目的とした学内外のインターンシップの実施などを行うことで、本学独自のトレーニング指導者育成のためのカリキュラム作成を進める。
工学分野との連携(東京理科大学橋本研究室との共同研究)
スポーツ科学分野と工学分野との連携を図り、現在は筋力トレーニングマシンの開発やカヌーエルゴメーターの開発を行なっている。また、非接触計測による筋力トレーニングによる生理学的な反応を予測する取り組みを行なっている。